新倉敷
21歳の夏、突然新幹線に乗って、岡山に向かったことがあるんですよ。
なんだろう、もう、いろいろなことで頭がいっぱいで、ちょっと疲れていたんですよね。
とにかく遠くへ行きたくなって。
某バイトでお世話になった先輩が泊めてくれるというので、玉島乙島というところまで行きました。
先輩の友人も呼んで、車で倉敷のイオンへ連れていってもらったり。
送ってもらうのが申し訳なくて、先輩が仕事へ出ている間に、
帰りはひとり黙々と新倉敷の駅まで歩くことに。
遠くに見える山々を眺めながら。
日が暮れないうちに急がなきゃな~、と考えながら。
見知らぬ土地で暗闇に包まれるのだけは避けたくて。
軒先に吊るされた野菜を横目に、のどかな道をてくてくと。
やがて車がビュンビュン走る大きな道路に出て。
ひたすらに、てくてくと。
焦げ茶色のキャリーバッグを引きながら。
ふらっと東京駅に戻ったら、銀の鈴広場で母が待っていたんですよね。
「あんた、なにやってんの、心配かけてんじゃないわよ(怒」
母に叱られた、ちびまる子ちゃんのごとし。
あの夏の日のことはよく覚えています。
あれから随分経ちました。
倉敷...
ふしぎな縁というか、なんというか。
人の人生とは分からないものです。